書籍紹介

第7章 女の目から見た男たち ② 男の後ろ姿 158P

たことをしたり、言ったりしてもいいのだろうか」という、偽らざる内面が宿っているのだが……。だから退任して権力や権威を失うと、自分を知っているものが周りに誰もいなかったということだってありうるのだ。

したがって、男は一生かかっても、自分というものがどんなものかわからないのである。そもそも、それが何かなどという問題は、問いだけがあって、答えがない問題であり、これが正解だと思っても、時間の経過や体験の積み重ねによって、その正解が正解と思えなくなってくるというものだ。

だから、男は「フーテンの寅」のようにして、行き先の定まらないまま、果てしない旅に立ち、

♪男というもの、つらいもの 顔で笑って、顔で笑って
腹で泣く、腹で泣く……

のであり、これが男に与えられた純粋な姿なのであろう。

ところがである……、女はその後ろ姿に男の憂いや、侘(わび)しさというものを感じとって、時にはそれが澄んで輝いても見え、「この男のために……」とか「この男と共に……」と、運命を託するロマンにかき立てられ、そこに悲喜こもごものドラマが生ずることになるのだ。

続く・・・

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