2025.10.20
【浮気調査の流儀】GPSでの浮気調査は違法?合法性とリスク、証拠能力の限界を金沢・富山の老舗探偵が解説

「この車にGPSさえ付ければ、パートナーの嘘を暴けるかもしれない」
手のひらに収まるほどの小さな機械が、あなたの抱える疑念をすべて晴らしてくれる。そうお考えになるのも、無理からぬことでしょう。ボタン一つで相手の居場所が分かり、言い逃れのできない証拠が手に入るように思える。その手軽さと確実そうに見える性能は、暗闇の中で一筋の光を求める方にとって、抗いがたい魅力を持つに違いありません。
しかし、立ち止まってください。
私は、桂木紀子。この仕事に半世紀以上を捧げる中で、便利な道具が、時に人を思わぬ落とし穴へと導く様を、数多く見てまいりました。
その小さな機械は、本当にあなたの求める「真実」を教えてくれるのでしょうか。それとも、あなた自身を「加害者」へと変えてしまう、諸刃の剣なのでしょうか。今日は、GPSを用いた浮気調査という、現代ならではの問題について、その本質からお話しいたします。
GPS調査、その合法と違法の境界線
まず、最も重要なことからお伝えせねばなりません。GPSを用いた調査が、法に触れるか否か。その運命を分けるのは、実に単純な原則に基づいています。それは、「誰の、どの車に設置したか」という、ただ一点です。
合法となる可能性が高いのは、その車が、あなたとパートナーの「共有財産」である場合です。例えば、夫婦のどちらかの名義であったとしても、主に家族で使うために購入し、維持費も家計から支出しているような車。あなた自身にもその車を利用する正当な権利があるならば、そこにGPSを設置したとしても、直ちに罪に問われる可能性は低いと言えましょう。
しかし、この境界線を一歩でも踏み越えれば、あなたは法の裁きを受ける側に回る危険があります。
例えば、すでに別居しているパートナーが一人で使っている車。あるいは、パートナーの会社の営業車。そして、もってのほかですが、浮気をしていると疑わしい相手自身の車。これらは、あなたに管理権のない「他人の財産」です。そこに無断でGPSを設置するために敷地内へ立ち入れば「住居侵入罪」、設置の際に車体を傷つければ「器物損壊罪」に問われる可能性があります。
さらに恐ろしいのは、あなたの行為そのものが、ストーカーと見なされてしまう危険です。
平成二十九年、最高裁判所は「相手の車両等にひそかにGPSを取り付け、その位置情報を探索する行為」は、ストーカー規制法にいう「見張り」にあたる、という判断を下しました。GPSで得た情報をもとに相手を待ち伏せしたり、無言電話をかけたりといった行為がエスカレートすれば、あなたはもはや被害者ではなく、法律によって罰せられるべき加害者となってしまうのです。
「少し調べるだけ」という安易な気持ちが、取り返しのつかない事態を招く。そのことを、くれぐれも忘れてはなりません。
GPSデータ、その「証拠能力」の致命的な限界

では、仮に合法的にGPSを設置できたとして、そこで得られたデータは、果たして浮気の「証拠」として通用するのでしょうか。
この点において、ほとんどの方が、決定的な誤解をされています。
結論から申します。GPSのデータだけでは、決して不貞行為の証拠にはなり得ません。
なぜなら、GPSが我々に教えてくれるのは、どこまでいっても「その時間に、車が、その場所にあった」という、ただ一つの客観的な事実に過ぎないからです。
確かに、ラブホテルの駐車場に長時間停まっていた、あるいは特定の異性の家の前に頻繁に出入りしている、といった記録は、浮気を強く疑わせる「状況証拠」にはなるでしょう。しかし、法廷という場で問われるのは、状況ではありません。誰がどう見ても言い逃れのできない、「不貞行為の事実」そのものです。
GPSの記録だけでは、決して分からないことが三つあります。
一つ、その車を「誰が」運転していたのか。パートナーが運転していたとは限りません。友人に貸していた、と主張されればそれまでです。
二つ、その場所に「誰と」一緒にいたのか。一人だったかもしれませんし、同性の友人と一緒だったかもしれません。
そして、最も重要な三つ目。その場所で「何をしたのか」。ラブホテルに車があったからといって、その中で二人が肉体関係を持ったと直接証明することは、GPSの記録からは絶対に不可能なのです。
「ラブホテルにいたのだから、浮気に決まっている」。そのようにお考えになるお気持ちは分かります。しかし、慰謝料請求などの裁判とは、感情ではなく、冷徹な事実の積み重ねによって進められるもの。GPSの記録だけを手に相手を問い詰めても、「一人で休憩していた」「仕事の打ち合わせで使った」などと言い逃れをされれば、それ以上追及する術はないのです。
では、探偵はGPSをどう「武器」として活用するのか
ここまでお読みになり、「では探偵もGPSを使っているではないか」と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。その通りです。我々プロの探偵も、調査においてGPSを活用することはあります。
しかし、その目的と使い方が、一般の方とは根本的に異なります。
我々は、GPSのデータを「証拠そのもの」として捉えることは決してありません。そうではなく、あくまで「調査を効率化し、成功率を高めるための、極めて優れた道具」として、限定的に、そして戦略的に活用するのです。
まず、依頼者様から合法的に許可を得た車両にGPSを設置し、数日間の行動パターンを分析します。これにより、怪しい動きが見られる曜日や時間帯、頻繁に立ち寄るエリアなどを、机上で把握することができます。いわば、本格的な調査に入る前の「下調べ」です。
そして、この下調べによって、「この曜日のこの時間帯に、このエリアへ向かう可能性が極めて高い」という的を絞り込みます。闇雲に何日も張り込むのではなく、最も可能性の高い瞬間に、我々調査員が現場へと出動するのです。これにより、無駄な調査時間を大幅に削減し、結果として依頼者様にご負担いただく調査費用を抑制することにも繋がります。
現場に着けば、あとはGPSに頼ることはありません。そこからは、我々調査員の目と足が全てです。GPSが示す位置情報を元に対象車両を捕捉し、そこから慎重に尾行を開始する。そして最終的に、パートナーと不倫相手が二人でラブホテルに入り、数時間後に出てくる。その決定的な瞬間を、顔まではっきりと分かる写真や動画という、一片の言い訳も許さない「証拠」として記録するのです。
GPSは、あくまで獲物の居場所を指し示す「羅針盤」に過ぎません。その獲物に気づかれることなく忍び寄り、急所を仕留めるのは、やはり熟練した狩人、すなわち我々プロの調査員の役目なのであります。
一人で戦わないで。まずは胸の内をお聞かせください
手軽に入手できる道具に頼ることは、時に、真実を見つめることから目を背け、あなた自身を思わぬ危険に晒す、諸刃の剣となり得ます。
あなたが本当に求めているのは、「車がどこにあったか」という無機質な点の情報でしょうか。それとも、あなたの心の傷に一つの区切りをつけ、人生の次の一歩を踏み出すための、「確かな真実」でしょうか。
もし、あなたが後者を望むのであれば。そして、そのための最も安全で確実な道を知りたいのであれば。どうか一人で悩まず、一度、その胸の内を私にお聞かせください。
「GPSでの浮気調査、その合法性とリスク」のポイントまとめ
今日、私がお話ししたことを、もう一度心に留めておいてください。
- GPS設置は、夫婦共有財産の車であれば合法の可能性があるが、他人の車への設置は犯罪となり得る。
- GPSを使った待ち伏せなどの行為は、ストーカー規制法に抵触する危険がある。
- GPSのデータは「車がそこにあった」事実しか示せず、不貞行為の直接的な証拠にはならない。
- 言い逃れをされれば、GPSデータだけでは法的に対抗できないのが現実である。
- 探偵はGPSを「調査を効率化する道具」として使い、最終的には調査員の目と足で決定的な証拠を掴む。
真実への道は、決して近道ばかりではありません。しかし、法と倫理に則った正しい道筋を辿れば、必ずや確かな光が見えてくるはずです。その道のりを、私たちが安全に、そして確実に、ご案内いたします。
ご相談は無料です。あなたの状況を冷静に分析し、最も賢明な一歩を踏み出すためのお手伝いをさせていただきます。



