書籍紹介

第7章 女の目から見た男たち ⑥ 男にとって職業とは 184P

レだってやればできた」などと、情けない負け惜しみを言わないことである。

余計なことだが、良寛さんのように生きたいと志して、写経をしたり、仏像を彫りながら生きていた者がいたが、結局は、食っていかれず、生活保護を受けるはめに陥った。これなどは純粋な気持ちであっただろうが、「世捨て人でなく、税金をただ食いする、世間のやっかい者」になってしまったというものだ。

つまり、男にとって仕事の場とは、単に経済的利益を得るところではなく、人間としての力量を試し、鍛えるところであり、その輝きに魅せられ、人が集まってくるのである。

それを裏付けるように、定年退職や隠居などで第一線を退き、悠々自適の生活をしているはずの多くが、「仕事は、生きがいそのものであった」と、何か貴重なものを失ったように寂しげに話すのを耳にすると、「自分にはこの仕事しかない、これが自分の生きる道」と言い聞かせて発奮することも、決して名誉や地位、財産だけのものではない、とつくづく考えさせられるのである。

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